殺人よ、こんにちは

殺人よ、こんにちは (角川文庫)

殺人よ、こんにちは (角川文庫)

 さらりと読みきれる小説を書くことができるというのは、それだけで賞賛に値するね。
 主人公は12歳の女の子で、お父さんは会社の社長。でもそのお父さんは突然死んでしまった。でも、私は知っている。お父さんを殺したのはお母さんなんだって。でも、そんなこと私には関係ないし、めんどくさい。夏の海に行っても泳ぐのは疲れるし、恋をするのだって退屈だ。そんな彼女のところで殺人事件がはじまって。
 解説でも指摘されていたけど、ヨーロッパ文学のにおい、特にフランス文学のイメージが強い。アンニュイな雰囲気と、無邪気で残酷な少女と、夏の海って組み合わせはまさにべたべただけど、うまく料理しているなと感嘆する。相変わらず、キャラクターを読者に認識させるのがうまい。ある程度典型的なキャラクターたちなのに、それなりの色がしっかりついていて魅力的になっている。
 こういったクールな物語の方が、赤川の資質がでるような気がする。