深夜特急2

深夜特急2?半島・シンガポール? (新潮文庫)

深夜特急2?半島・シンガポール? (新潮文庫)

 「アジアン・ジャパニース」「何でも見てやろう」「転がる香港に苔は生えない」等、一時期この手のバックパッカーものの作品を、多数読んでいました。「転がる〜〜」はバックパッカーとは少し違いますが、その本が持っている雰囲気は、これらのものと共通していると思います。「アジアン・ジャパニース」だったと思いますが、バックパッカーとして旅する若者たちを、「深夜特急の旅人たち」と表現していました。なるほどの表現だと感心しました。
 沢木耕太郎が旅に出たのが26歳で、今の僕と同い年ですね。シンガポールにて、沢木が会社を辞めた理由、旅に出た理由を回想する場面がありますが、ずいぶん感傷的な場面で、僕の胸にも去来するものがあります。
 何かをやり直すには遅すぎる気もするし、まだ間に合うのではとも思う。26歳の10年前は高校1年生です。この事実にはあまり気付きたくないです。

スペース

スペース (創元推理文庫)

スペース (創元推理文庫)

 駒子シリーズの第3作目となります。表裏の関係となるであろう、「スペース」と「バックスペース」の2編からなっています。
 「スペース」にて、コミュニケーションの不可能性の問題を、ミステリにおける動機解明の問題と合致させ、そこから駒子と瀬尾さんの関係に落とし込んでいくあたり、よくできています。きれいなラブストーリーです。

五匹の子豚

 クリスティの新訳ということで、手に取ってみました。海外の古典ミステリを読みたいという気持ちはずっとあるのですが、訳文がとっつきにくく、いつも苦労されられるので、どうしても敬遠してしまいがちです。本書は、新訳であるためか、とても読みやすかったです。
 16年前に起こった殺人事件の真犯人を、当時の関係者である5人への調査により、ポワロが見つけ出すというあらすじです。
 クリスティの小説のうまさに感嘆します。フィリップ・メレディスの兄弟の重層的な人物描写など、むずかしそうなことを何気なく書いてしまっています。
 クリスティ生誕120年とのことで、今後1年間早川書房より新訳が出版されるようです。できる限り未読のものを購入していきます。

花物語

花物語 (ポプラ文庫)

花物語 (ポプラ文庫)

 雑誌「Myojo」に連載されていた、さべあのまの挿絵付き橋本治の小説です。橋本治は、学校の教科書にのっているようは小説を書くことを目指したそうです。そのとおり、道徳の教科書にのってもよさそうな小説ばかりですが、やはり橋本治橋本治です。
 特におもしろいと感じたものが、「お年玉」という小説です。高校生の男の子と女の子が、一緒に初詣に行くため、電話をするという内容です。

 ヤスコさんは、「何してるのー?」と言いました。そう言って、「それで、あんたがひとりで勝手なことしていたら、私は怒るからね。」と黙っているのがヤスコさんです。
 ミノルくんは、「なんにも――」と答えました。なんにもしていない以上、正直に「何にもしていない」と言うしかなかったからです。
「だったら、私のところに電話してくりゃいいじゃないよ」と、ヤスコさんは思いました。思いましたが、黙っていました。
「だったらさ――、初詣に行かない?」と、ヤスコさんは言いました。「用もないのに電話した女」と思われるのが、ヤスコさんはいやだったからです。
「行こうか」と言ったのは、夜中に初詣に行って、さっきちょっと前に起きてきたばかりのミノルくんです。ミノルくんは暇で、誰かが誘いに来てくれるのを待っていただけだったのです。

 登場人物の感情を、ここまではっきりと言葉としてしまう作家はあまりいません。そこまで直截的な言い方で描写してしまうと、あんまりだ、という印象を通常は受けるはずです。でも、橋本治にはそうなりません。
 言葉(論理)の力が非常に強力でありながら、微妙な思春期の少年少女たちの感情を描ききっています。叙情的でもあります。やはり橋本治は只事ではない、と思います。
 さべあのまのイラストも素晴らしいです。

変調二人羽織

変調二人羽織 (光文社文庫)

変調二人羽織 (光文社文庫)

 表題作は、幻影城に掲載された連城三紀彦のデビュー作です。デビュー作のみならず、その他の作品も質が高く、すごい人は最初からすごいのだなと、再認識しています。
 印象的だったのが、3作目にのっている「六花の印」という作品です。後の花葬シリーズを予感させる作品です。
 まったく関係ないと思われる、明治時代と現代の物語が並行して語られていき、最後は驚きの・・・。日本語の美しさに文章を読む目が奪われ、読み終わったときは小説の構造の美しさにはっとさせられます。
 連城の小説は、彼が若い頃に作った小説の方が、圧倒的に好きです。

およそ3年半ぶり

 ずっと昔に放置してしまってこのブログを、復活させようと思います。
 以前のとおり、僕の読んだ本について書いていきます。この3年半で、僕の中でいろいろなことがありましたが、やはり本だけは好きなので、初心に帰る思いで、キーボードにむかいたいです。
 以前書いた内容は、もうすっかり忘れてしまっているのですが、昔の記事を読んでいると、なんだか、感傷的な気持ちになりますね。
 通り過ぎてきた時間に気づきます。

新詳日本史

新詳日本史―地図資料年表

新詳日本史―地図資料年表

 世の高校生の多くが、きっとこの本を使って日本史を習っているのだろうな。
 やっぱり、この手の本はお勧めできる。本としてのコストパフォーマンスが良い。
 僕が高校生の頃と比べて、文化面についての多くの紙幅が割かれているように思う。
 気が向いたときにぺらぺらするのが楽しい。