色好みの構造
- 作者: 中村真一郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1985/11/20
- メディア: 新書
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そして「色好み」の文学の代表作がまさに「源氏物語」である。まあ、これに疑問をはさむ余地はないよな。で、おもしろかったところが「枕草子」との比較をした部分。著者は「枕草子」を「をかし」の文学、「源氏物語」を「あはれ」の文学と分類している。そして「をかし」というのはある社会集団の名かの共通の感覚、つまりは社交界の感覚なのである。
しかし徐々に武士の存在が大きくなってきて、平安の文化も衰退してくるようになると、この「色好み」の精神も失われてくる。「夜半の寝覚め」や「浜松中納言物語」にはその変化がはっきり現れている。これらの作品には「色好み」の遊戯的な側面よりも、夢うつつのなかへ迷い込む現実逃避的な側面が強く現れている。