羊をめぐる冒険

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険(下) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険(下) (講談社文庫)

 この作品も、なぜだか分からないけれど10代の頃すごく好きだった。
 6、7年ぶりに再読。
 出てくる人物や場所や物の歴史というか、過去の話を丹念に描いているなと気づく。ちょっと不必要なくらいに描いている。その点から、この作品は村上春樹の作品としてはじめて、しっかりとした物語性を感じる長編小説であるけれども、実際は個々の歴史を収集してできた物語集であるようにも読める。それらの歴史の物語は独立しているようでいてどこかでつながっていて、そして全て終わってしまった物語である。
 あっさり読み流していってしまう読者たちに抵抗するように、無慈悲に刻まれていく時間の流れにあらがうように、個々の歴史は描写されているようにも映る。