1973年のピンボール

1973年のピンボール (講談社文庫)

1973年のピンボール (講談社文庫)

 これも再読の作品。村上春樹の作品は、特に80年代の作品は、10代の頃大好きだった。
 『風の歌を聴け』が青春の終わりを描いたとするならば、本作は、もう戻ることのできない日常の淵にいるような感じである。青春は本作にとって、すでに通り過ぎた後のものなのだ。
 ただ、この作品は昔からあまり好きではなかった。まず『風』に比べると物語性が増していて、そこの部分が中途半端で退屈である。次に、個々のガシェットが妙に文学臭くてかっこ悪い。退屈しのぎのピンボールに耽る主人公だとか、記号的に描かれている双子の女の子だとか。あまりにも文学すぎて、おもしろくない。