経済学とはなんだろうか

経済学とは何だろうか (岩波新書)

経済学とは何だろうか (岩波新書)

 82年に出版された本である。そのため、ちょうどその頃の経済学の流れを感じることのできる本になっている。ケインズ経済学はその力をすっかり失ったものの、そのかわりとなるようなものを見つけることもできず、サッチャーはビックバンを始めて、アメリカではレーガノミックスが始まろうとしていた時代である。現代につながる市場原理主義の萌芽があらわれた時代である。
 そもそも近代経済学とは、近代ヨーロッパと現代アメリカに強い依存している。そのため、経済学のジャーゴンは、アメリカの日常世界ではそのまま何の抵抗もなく理解されるにもかかわらず、日本ではその言葉は現実から浮遊した特別なものになっている。このあたりは、丸山真男の『日本の思想』に詳しいだろう。
 そして、アメリカにおいて経済学は1個の制度になっている。制度化すること、つまり自然科学のように文脈に適応することが、70年代の「経済学の危機」を招いたのだ。