海がきこえるⅡ

海がきこえる〈2〉アイがあるから (徳間文庫)

海がきこえる〈2〉アイがあるから (徳間文庫)

 ジブリで映像化された『海がきこえる』の続編。拓と里伽子は19歳のとき、つまり大学1年のときの、東京での物語である。この本にも、近藤勝也によるイラストが多数掲載されている。それを見られただけで、僕は満足だ。
 95年に出版された本である。なので、特に女性キャラクターの造形のところに時代を感じさせる。里伽子も、津村知沙も、里伽子の父の再婚相手の女性も、時代の先頭で風を切って走っているように見える一方で、実は心のうちで傷ついているという女性である。こういう女性が存在できたのが、90年代なのだろうと思う。そして、僕はこういった女性像が嫌いである。要求できるところだけは要求して、実は傷ついていたのだからやさしくしてほしいという態度は、ただの甘えじゃないかと思う。心の外傷性というところに、たいていの男はくらっときちゃうからだまされてしまうかもしれないけど、これはずるいなあと思う。もっとも、このような社会をつくったのは間違いなく男なのだから、その点は何も言うことはできないけれど。
 現代だと、傷ついていることすら気づかない、無自覚な女性というのが、らしいキャラクターになるのだろうか。