マリリン・モンロー

マリリン・モンロー (岩波新書 黄版 (381))

マリリン・モンロー (岩波新書 黄版 (381))

 マリリン・モンローの生涯を追う。
 4章に分かれていて、面白いと思ったのは前半の1章と2章。とくに1章。3章のノーマン・メイラーとモンローの関係を記した部分、4章の日本でのモンローについて記した部分は、完全に蛇足だ。
 本書でのモンロー観はなかなか面白かった。
 マリリン・モンローは、1926年に生まれて、1962年に亡くなっている。私生児として生まれた彼女は、はじめ親戚の家を転々とし、結局は孤児院に落ち着くこととなる。モンローに対するイメージとは、ナイスボディだけどおつむは弱いという「白痴美」というものか、ハリウッドという幻影の世界で翻弄されてしまった悲しき時代の女、というものだろう。
 本書でのそれは、幸福な家庭生活というものを夢見ながら、自分の野心を追いつづけたウーマン・リブ運動の先駆けのような存在、であるとしている。不幸な幼少期の思い出より、モンローの心の中には、幸福な家庭を望む気持ちが強かった。彼女の3回の結婚生活は、どれも長続きしなかったが、どれも、彼女はかいがいしく幸せな家庭を築く懸命な努力をしている。実際、ジョー・ディマディオにしてもアーサー・ミラーにしても、どちらも古風で保守的な、父権性あふれる男性である。この点よりも、モンローが結婚生活に何を望んでいたのかが、はっきり分かる。しかし、モンローには、ハリウッドで成功して、すばらしい女優になるという夢ももっていた。そのためには、自分の豊かな肉体を武器としなければならない。まさにアメリカのセックス・シンボルという役割である。モンローは、この点を充分理解して、プロフェッショナル精神のもと、自分の役割を信念をもってこなしていく。でも、モンローのこういう気持ちを、彼女の夫たちは理解できなかった。特にモンローが好きになるような父権的な男性は、きっと理解なんてできないだろう。
 結局モンローは、家庭より自分の夢を選ぶのだけれども、その結果彼女はどんどん疲弊していってしまう。本書を読むと、マリリン・モンローがとても魅力的なかわいい女の子で、でもとてもかわいそうな女の子であるのだなというのが分かる。