ジョン・レノン対火星人

ジョン・レノン対火星人 (講談社文芸文庫)

ジョン・レノン対火星人 (講談社文芸文庫)

 高校時代の僕にとって、「さようなら、ギャングたち」はまさに聖典だった。そうであったら、同じ作家の別の小説を読みたくなるものだろう。そうして手に取ったのが、本書だった。読了後の感想は、あまりいいものではなかった。おそろしくつまらなく感じたことを覚えている。
 そして再読。あれだけつまらないと思った小説を、僕が今、どのように感じるのか、知ってみたかった。
 今なら、なんとなく分かるところがある。本書のあとがきで高橋本人も書いているように、この作品のなかには文学性なんて微塵もない。とげとげした、痛い悲しみだけが目立っている。「すばらしい日本の戦争」や「テイタム・オニール」、「パパゲーノ」がどんな意味をもっているのか、今の僕だとなんとなく想像できる。もちろん、そんなことはまるで意味のないことだし、正しい読み方でもないと思う。
 知識を得ることによって新たな読解ができるようになり、今までとは違う感性のスイッチがはいることになる。そのことが、作品を正しく理解していることにあたるのかどうか、僕には分からないが、昔のように読むことのできなくなったことへの寂しい想いはある。