制服少女たちの選択

制服少女たちの選択―After 10 Years (朝日文庫)

制服少女たちの選択―After 10 Years (朝日文庫)

 94年に出版された本の文庫化。ただし書かれている内容は、90年代前半に宮台が、さまざまな雑誌に発表したものをまとめたものである。元援交少女たちの座談会や中森明夫による解説などがついてくる。中森による解説は、かなり面白かった。
 当時の女子高生が援助交際に向かったのには、いくつかの理由が考えられるだろう。
 まず、彼女たちの親の世代、つまり団塊の世代の問題がある。彼らは、2重の意味で「絶対性」の伝達者としては不適格だった。それは、若いころに自分たちが世間や道徳を否定した実績ゆえに、そして世間がすでに喪失している現代では、絶対的な道徳など誰も信用しないためにだ。
 また、父権の崩壊により、エロス的な世界である家庭と、非エロス的な世界である社会との架け橋になる部分がなくなってしまった。父親とは、社会を背負いながら家庭の中に侵入してくる、社会と家庭の緩衝地帯であったのだ。結果、子どもたちはむき出しの社会にさらされることとなる。子どもたちは「確かさ」を獲得できぬまま、永遠に都市の中を浮遊することになったのだ。
 宮台は、「まったり革命」として、当時の女子高生たちを肯定していた。彼女たちは傷ついていない、としていた。しかし、この文庫化の際に付け加えられたあとがきで、宮台はそれを修正している。彼女たちは傷ついていた、と。ただし、彼女たちは個別の売春で傷ついたわけではない。そうしたコミュニケーションの集積に、世の中がそうしたコミュニケーションだらけであることに、願望水準に見合う現実が見出せないことに、彼女たちは傷ついたのだ。
 最後に、宮台史観による社会の変遷について、メモしておく。

  1. 村落の共同性(顔見知りの共同性)
  2. 世間の共同性(世間の共同性)
  3. <若者>の共同性(世代という共同性)
  4. かわいいの共同性(無内容な共同性)
  5. 差異化の共同性(視線の透明性)
  6. 島宇宙の共同性(視線の不透明性)