神と仏

神と仏 (講談社現代新書)

神と仏 (講談社現代新書)

 題名の通り、日本の神と仏について論じている。両者を比較する際、明確な基準を設定してくれているので、とてもとっつきやすい。
 まず、神は見えざるもの、つまり不可視性、一方仏は見えるもの、可視性の存在であるといえる。
 第2に、神と仏の作用にかかわる違いである。「イタコ」など神は媒介するもの、一方、修行僧を見ていればわかるように、仏は体現するものとしてある。この点より、おもしろい考察が続いている。神は、肉体よりはなれた精神が浄化して聖化してなる、とも考えられ、ここには、肉体に対する蔑視、嫌悪がある。一方仏のほうには、肉体と精神という2元的な世界観は存在しない。精神は肉体より離れることはない。仏になろうとする試みは、徹頭徹尾、肉体という場面において演ぜられるものである。ここに仏教独自の存在領域がある。
 第3は、祟りと鎮静という基準である。神は祟りという局面を、仏は加持祈祷、祟りを鎮静するという局面を持つ。これは「源氏物語」を思い出せば、すぐに納得できる。
 そのほかに、おもしろかった指摘の箇所。日本の神は、「場所」というものに強くひきつけられている。社会に予言を与えるのではなく、共同内の奥に深く浸透し、没個性的な存在に転生していくのだ。