晴れ、ときどき殺人

晴れ、ときどき殺人 (角川文庫)

晴れ、ときどき殺人 (角川文庫)

 角川文庫で赤川次郎ベストセレクションなる特集をやっていて、その中の一冊。もともとは赤川のデビュー5年後、82年に出版された本らしい。
 傑作選の中に選ばれるだけあって、おもしろいし、うまい。セリフと必要最低限の心理描写だけで語られていて、情景の描写などはほとんどない。おかげでテンポも速く、小説の理想形の1つだと思う。こういった作品を読んでいると、日本文学伝統の、情景描写を重ねていくことでドラマを練り上げていく手法、たとえば川端康成の作品のようなものは、分かりづらいし、退屈だよなと考えてしまう。川端作品は大好きなんだけどね。
 ページ数に対して、登場人物が多いと思うのだが、うまくキャラクター付けされていて、ちゃんと消化できるようになっている。物語の中で、おさまるべきところにきちんとキャラクターがおさまっていると、感じることができる。
 ほめまくりだ。