海がきこえる

海がきこえる (徳間文庫)

海がきこえる (徳間文庫)

 本作を原作として、望月智充が監督、スタジオジブリが制作したアニメーション作品が大好きだった。高校時代の、僕の好きなアニメトップ3には入るだろう。もっと勇気があれば、この作品のおかげで僕は、きっとアニメーターになっていただろうと思う。
 まあ、そんな自分語りはおいといて、アニメの方とこの原作とでは物語が少し変わっている。解説で宮台真二も指摘しているが(ちなみにこの宮台による解説はなかなか鋭く、読み応えがある)、アニメの方に男の子の視線が多分に混ざっているとすれば、原作の方は徹底的な女の子の視線で作られている。いわゆる「関係性のおもしろさ」というやつが、全面に出てきているような感じである。
 年をとって、忙しくサラリーマンなんかをやっていると、この手のおもしろさがだんだんと理解できなくなっているような気がする。白か黒なのか、はっきりと結論を求めたくなる。これは危険信号である。
 ときどき思い出して、こんな作品を読んでいきたい。