日本の思想

日本の思想 (岩波新書)

日本の思想 (岩波新書)

 名著、と誉れ高き本。
 4つの章に分かれていて、最初の1章、2章は少々難解で、つづいての3勝、4章は分かりやすかった。おそらく、1・2章はどこかで発表されてもので、3・4章は講演の内容を写しとったものなのだろう。読了後アマゾンを覗いてみると、やっぱり、まず3章4章のほうを読んでから、1章2章を読むようにという書き込みが多かった。僕もこのように読めば、もっと理解がしやすかったように思う。
 書かれている内容は、きわめてまっとうなものである。もっとも、まっとうであるからこそ、名著といわれるのかもしれない。
 第3章の部分だけを、とりあえずまとめてみる。
 丸山は、西洋をササラ型の文化に対し、日本をタコツボ型の文化であるとする。西洋の現代の文化とは、ギリシャ−中性−ルネサンスという歴史の連なりの末端に存在している。そのため、個々の文化がどれだけ乖離していたとしても、すべての根っこは共通しているのだ。一方、維新後西洋の文化を個々に輸入してきた日本の文化は、そのような根っこをもっていない。つまり個々の文化はそれぞれ独立してものとなってしまう。つまりそれが、タコツボ型の文化というわけである。そして、戦前そのような日本の文化の地盤を支えていたものが、国家神道による天皇制であり、戦後はその役割をマスコミがゆだねるようになる。しかし、本来マスコミとは、独立した個人に受動的に働きかけるものである。そのため、タコツボ型に分断されている組織間に流通するようなものではない。マスコミには、それぞれの組織間の溝を打開する力は乏しいのである。