魔法飛行
- 作者: 加納朋子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2000/02/18
- メディア: 文庫
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北村薫の強い影響下にあるのが分かる。ただ、こちらは作者が女性なので、作品のもっている雰囲気が、北村のそれよりさらにやわらかい。北村の作品の方が、論理の部分がもっとシャープであるように思う。一方こちらはその分、動機の部分に大きく焦点があてられている。北村作品がおそらく抑制している、感情的なところを少しだけ押し広げている印象がある。それでも十分上品であるが。
推理小説とは、読者の先入観を意図的に操作していく小説である。トリックが暴かれることにより、読者に、また登場人物にも、新たな価値の地平が現れることとなる。日常の謎派の人たちは、この点を非常に意識する。突然現れたように見える新しい世界。それにとまどいながら、登場人物地は少しづつ変化していく。日常の謎派にとって、トリックはそのための装置となっている。