千利休 無言の前衛

千利休―無言の前衛 (岩波新書)

千利休―無言の前衛 (岩波新書)

 あまりおもしろい本ではなかった。利休について、茶道について、もっと体系的な知識が書いてあると思っていたのに、実際は赤瀬川源平の、千利休について自分の芸術観をふまえたうえでの放談、といった感じだった。
 その中でも、利休や当時のほかの茶道家たちが、茶道とともに多くが堺で商人としても活躍していたという事実は驚いた。利休の茶道とは、究極の旦那芸でもあったのだ。そう考えると、利休と秀吉の関係も、世の支配者と芸術家という対立であると、単純に考えるべきではないなと考えられる。
 また、西洋の印象派までの絵画が、日常からいかに離脱、乖離していこうとしていたのに対し、印象派以降の主に前衛の芸術は、日常に接着していこうとする、という指摘はおもしろかった。