人間にとって経済とは何か
- 作者: 飯田経夫
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2002/06
- メディア: 新書
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前半では、著者の経済哲学や現在の日本に対する考えがエッセイのようにまとめられている。社会が豊かになった現在、不況だといっても多くの人間は衣食住を最低限確保することはできる。このような時代にあって、経済学とははたして必要なのだろうかと、著者の哲学が述べられている。
後半は、スミス・マルクス・ケインズと経済学の大きな流れを簡単におさらいする。その後に、80年代のレーガン政権時のアメリカの経済政策について、紙幅を多く使っている。レーガノミックスやイギリスのサッチャー政権がやろうとしたことは、つまり小さな政府をつくることだった。ケインズ主義による福祉国家への傾向を弱めて、市場の手綱をゆるめていった。これによりアメリカ経済は市場原理主義を強めることになった、と著者は書く。
また、日本がバブル経済に突入した原因を、80年代のアメリカの日本に対する圧迫だとしている。当時(現在もだが)、膨大な貿易赤字と財政赤字を抱えていたアメリカは、その貿易赤字縮小のため、日本に対して内需拡大と規制緩和を要求した。日本はこれを受け入れた。それにより金融超過を起こして、お金がだぶつき、それが株や不動産に流れたのだ。また、現在の「新古典派」の経済理論は、アダム・スミスの経済理論を高等数学的装飾によってとりつくられたものに過ぎないとしている。