アラビアのロレンス
- 作者: 中野好夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1940/09/01
- メディア: 新書
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本書は、文学者の中野好夫によるものである。中野の文章は格調高く、薫りたつようなもので、まるで古典の絵巻物語を読んでいるような錯覚に陥ることがある。例えば、「青年考古学者」「沙漠の叛乱」「沙漠の叙事詩」「闘争と孤独」「この人を見よ」といった各章のタイトルを眺めているだけで、遠くアラビアの世界へのエキゾチシズムを感じないだろうか。
ロレンスの自己分裂的な性格については、「わからないな」というのがわかったという印象。内省的でロマンチストでナイーブで、破滅型の芸術家に多く見られるような性格だろうか。たしか三島由紀夫だったか、思春期とは、「生きる」ということに羞恥心を持っている時代である、と書いていたのを記憶している。ロレンスやそのほかの芸術家たちは、社会に出て、いくつもの断念を経験した後でも、どこかにそのようなものを引きずって生きているような気がする。