日本の恋歌

日本の恋歌 (岩波新書 黄版 (385))

日本の恋歌 (岩波新書 黄版 (385))

 竹西寛子が30人の歌人を取り上げて、その味わいを語っている。選ばれている歌人柿本人麻呂から近代の与謝野昌子までと幅広い。選ばれた短歌はもちろんだが、それを解説する竹西の文章もまた美しく、気分を落ち着かせてくれる。読んでいて意味が良くわからなくとも、その音の美しさに癒されているようだ。腕からこぼれおちた絹の織物は、永遠にただ地面に重なっていくだけで、途切れることがない、そんな印象の文章だろうか。
 美しい文章は、ただそれだけで人を幸福にする。
 和泉式部の歌集を読んでみたくなった。