創価学会

創価学会 (新潮新書)

創価学会 (新潮新書)

 自民党公明党の長期政権が続いている今、創価学会が日本に与える影響は大きい。創価と聞いてすぐ、閉鎖的だからと拒否反応を示すのではなく、しっかりと理解しておくことが重要になるだろう。そういうことで、読んでみた。
 著者の島田裕巳は、現代日本社会、特に宗教の問題を中心にあつかっている学者である。一般人がなかなか知ることのできない、創価学会の歴史や池田大作の素顔について詳しく述べているものの、客観的であることを心がけたとしている。
 創価学会日蓮正宗の教義から生まれた。創設者の牧口常三郎尋常小学校で校長をしていた経験もあり、当初は、宗教団体というより教育団体としての色が強かった。
 牧口の死後跡を継いだ2代目会長戸田城聖のときに、学会は大きく成長する。戸田は、戦前に学習塾を経営して成功した経験を持っており、実業家的な側面があった。戦後の高度経済成長化の都会では、田舎からの労働力の流入が盛んであり、彼らはたいした学歴を持たず、確固とした労働団体や都市での共同体といったものに入ることもできず、不安定な生活を送っていた。創価学会は現世での幸福を約束する強烈な教義のもとで、彼らを吸収していった。創価学会が庶民の宗教団体といわれるゆえんは、このことによる。
 そして、組織をさらに完成させ、安定させたのが3代目会長の池田大作である。これら3人の会長に等しく言えることは、彼らがキリストやマホメットのような聖人として存在しているわけではないということだ。彼らはあくまでも教義の解説者である。そして創価学会には、奇跡といったような超自然的な現象を、教義の中にあまり採用していない。この点をもって、本書では、学会員が創価学会で結びついている理由を、宗教的なものではなく、きわめて現実的なメリットによるものだとしている。
 創価学会とは戦後日本の映し鏡のような存在である。村落共同体を飛び出して、帰属する団体をもてなくなった都市の流入者を取り入れることで、学会は大きく成長した。創価学会とは、僕たちより遠く離れた集団ではない。僕たちの欲望が肥大化した姿のそれであると、している。