アメリカ文学のレッスン

アメリカ文学のレッスン (講談社現代新書)

アメリカ文学のレッスン (講談社現代新書)

 米文学者で、翻訳家でもある柴田元幸がいくつかのキーワードを上げて、アメリカ文学を紹介していく。紹介されている作品は、古典から現代の作品までと幅広く、その選択の仕方はかなり無造作である。アメリカ文学に関する知識がなくても楽しめるだろうが、あったほうがより楽しめるだろう。
 取り上げられているキーワードは、「名前」「食べる」「幽霊の正体」「破壊」「建てる」「組織」「愛の伝達」「勤労」「親子」「ラジオ」、である。本書を読んでいくことでさらに、より上位の段階でアメリカ文学を支配している要素を見つけることができる。それらは、「アメリカの夢の表と裏」「父の否定(しかし父は存在しない)」「セルフ・アイデンティティの獲得」である。これらの建国以来のアメリカの歴史と符合していく。