少年アリス

少年アリス (河出文庫)

少年アリス (河出文庫)

「決まっているぢゃないか。ブリキ板で月を、貝殻で星をつくるんだよ。」
「何の為に。」アリスが途方に暮れていると先の少年は呆れ顔で、
「君は何も知らないんだなあ。月は煙突の煤ですぐ黒くなってしまうし、星は剥落するから度々付け替えるのさ。天幕の管理は僕達に任された仕事なんだ。学校に来る前、委員会から聞かされなかったかい。」(p,41)

 文章の力が、作品自体を牽引していく代表的作品。