少女コレクション序説

少女コレクション序説 (中公文庫)

少女コレクション序説 (中公文庫)

 澁澤龍彦の文章は、決して技巧に淫しているようなものでなく、簡単なものなのに、妙な艶がある。本書では、ベルメール球体関節人形や、ルイス・キャロルや、マンドラゴラについて、滔々と流れるように語っている。
 その中から、おもしろかったものを紹介。

  • 文化人類学では、破瓜期の少女を共同体から切り離し、小屋などに幽閉させる習慣が、よく見られる。これは一種の通過儀礼であるが、性的に成熟した少女を近親相姦から守ることと、クリトリスによる快感を断念させる目的があるらしい。
  • ディアナ*1の月は処女性の象徴である。処女崇拝は、冷感症崇拝に結びついて、そのまま極端に走ってネクロフィリアに到達する。
  • 西洋と日本の違い。西洋では、エロティシズムは社会風刺と現実暴露の機能を果たす。禁を破るというところに、快楽の条件がある。日本の浮世絵などに見られる、現実肯定的なおおらかさとはまるで違う。
  • 伝説や神話や文学作品などに見られる近親相姦とは、結局、隠された強烈な自己愛の変形である。
  • アメリカのある心理学者によると、人間の芸術活動のひそかな目的は、「失われた子供の肉体を少しずつ発見していくこと」だそうだ。
  • オーギュスト・コントの発見した人間精神の三段階の法則は、つまり、最初は「神学的状態」であり、次に「形而上学状態」であり、最後に「科学的状態」となるものは、玩具の発達の歴史にも、見事あてはまる。

*1:ローマ神話の女神。ギリシャ神話ではゼウスの子、アルテミスにあたる。