AV女優
- 作者: 永沢光雄
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1999/06/10
- メディア: 文庫
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エロ目的で読むとがっかりする。それ以上に、思いっきり横っ面をはたかれたような衝撃を受ける。とにかく、彼女たちのこれまでの人生が壮絶すぎる。両親の離婚や家庭内暴力などは当たり前である。ファーザーファッカーなどを経験しながらも、彼女たちはあっけらかんとしている。みんな間違いなく不幸な家庭をすごしているのだが、その不幸ぶりを良くわかっていない。
ほかにも驚いたことに、彼女たちが意外に古風であるということだ。つまり、「恋愛」や「結婚」という幻想をいまだに抱いているということ、または抱いていた。彼女たちは不幸な家庭から逃れるために、また自分を理解してくれない学校から逃れるために、男と同棲をはじめる。しかし若い2人の共同生活が長く続くはずもなく、すぐに破綻する。放り出された社会は、彼女に優しさを寄せることはない。助けを求められる大人の存在も、彼女たちはもっていない。そうして、彼女たちは自分の体を商品にすることに気づいていく。そこには、金銭的な問題と、自分が必要とされているというアイデンティティーの問題があるのだろう。
ただ、この本は10年以上前のインタビュー集なので、現在の状況とは少しちがっているだろう。10年前の彼女たちは、AVに出演することに少なからず抵抗を感じていた。少なくとも、無視できない心のしこりを感じていたはずである。
80年代の終わりから90年代の半ばまでの日本社会を理解するための、貴重な一冊となっている。