AV女優

AV女優 (文春文庫)

AV女優 (文春文庫)

 AV女優たちに、かなりしっかり話を訊いているインタビュー集。インタビューされているのは、91年から97年あたりに活躍していた女優たち。
 エロ目的で読むとがっかりする。それ以上に、思いっきり横っ面をはたかれたような衝撃を受ける。とにかく、彼女たちのこれまでの人生が壮絶すぎる。両親の離婚や家庭内暴力などは当たり前である。ファーザーファッカーなどを経験しながらも、彼女たちはあっけらかんとしている。みんな間違いなく不幸な家庭をすごしているのだが、その不幸ぶりを良くわかっていない。
 ほかにも驚いたことに、彼女たちが意外に古風であるということだ。つまり、「恋愛」や「結婚」という幻想をいまだに抱いているということ、または抱いていた。彼女たちは不幸な家庭から逃れるために、また自分を理解してくれない学校から逃れるために、男と同棲をはじめる。しかし若い2人の共同生活が長く続くはずもなく、すぐに破綻する。放り出された社会は、彼女に優しさを寄せることはない。助けを求められる大人の存在も、彼女たちはもっていない。そうして、彼女たちは自分の体を商品にすることに気づいていく。そこには、金銭的な問題と、自分が必要とされているというアイデンティティーの問題があるのだろう。
 ただ、この本は10年以上前のインタビュー集なので、現在の状況とは少しちがっているだろう。10年前の彼女たちは、AVに出演することに少なからず抵抗を感じていた。少なくとも、無視できない心のしこりを感じていたはずである。
 80年代の終わりから90年代の半ばまでの日本社会を理解するための、貴重な一冊となっている。