新しいヘーゲル

新しいヘーゲル (講談社現代新書)

新しいヘーゲル (講談社現代新書)

 ドイツ観念論の哲学者、ヘーゲルの入門書。
 まず、分かりやすい。ヘーゲルの思想を、近代のヨーロッパ人と現代の日本人との考え方の違いをふまえた上で、簡単な日本語ですっきり説明している。両者の違いを念頭に置いて読まなければ、確かにヘーゲルを理解するのは難しいだろう。さらに、本書の最後の部分で、哲学史におけるヘーゲルの位置を紹介してくれているのも、ヘーゲルをより理解するのに役に立った。
 まとめると、ヘーゲルとは西洋近代の最後の哲学者で、人間の理性というものを信じていた最後の哲学者だと考えられる。ヘーゲルの次にでてくのは、キルケゴールニーチェマルクスである。
 ヘーゲルの哲学の中心をなす、弁証法とは、否定と矛盾と対立の意を内包しているもののことだ。(これ、めちゃくちゃ分かりにくいけど、「止揚」ってことばのイメージのこと*1)で、ヘーゲルはこの考え方を世界のすべてに敷衍していこうとした。世界の全体を自分の弁証法をもって体系づけようとした。その思考の過程を描いたのが、『精神現象学』である。
 ヘーゲルは18世紀の後半から19世紀前半を生きたヨーロッパ人である。自然科学の発展が目覚しく、航海術の発展でもって世界がぐんぐんと広がっていった時代であろう。ヘーゲルの思想には、そのような時代の勢いが感じられる。著者も、ヘーゲルの思想を西洋近代のオプティミズムと表現している箇所がある。

*1:本書では、これもすっごく簡単に説明してくれている