ことばと文化

ことばと文化 (岩波新書)

ことばと文化 (岩波新書)

 鈴木孝夫の名著。
 西洋中心的だった言語学や、学問全般の傾向に構造主義的な視点を導入して、日本語や日本人独自の思考を明らかにする。
 まず、「ことば」とは、

混沌とした、連続的で切れ目のない素材の世界に、人間の見地から、人間にとって有意義と思われる仕方で、虚構の文節を与え、そして分類する働きを担っている。言葉とは、絶えず生成し、常に流動している世界を、あたかも整然と区分された、ものやことの集合であるかのような姿の下に、人間に提示して見せる虚構性を本質的に持っているのである。(P, 34)

 その分類の仕方は、集団ごとに違いがあり、それが言語の違いとなっている。ことばとは、客観的なものを表現しているのではなく、分類の仕方の集約なのである。
 また「ことば」の意味を教えることはできない。「ことば」の定義を教えることができる。定義とは、そのことばが世界のどこからどこまでの範囲を指定しているのかを示すことである。
 それ以後、日本語独自の特徴より、日本人の思考を読み込んでいく文章が続いている。