グラン・ウ゛ァカンス

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

 そこは仮想リゾートの<数値海岸(コスタ・デル・ヌメロ)>の<夏の区画>、人間につくられたΑIたちが暮らしている。人間たちはゲストとしてその世界にやってくる。そこで人間たちは、ひとつのΑIの体に入り込み、入り込んだΑIの設定、キャラクターを演じながら、他のΑIたちを使って性的興奮を得る。そのお相手をするのが、そこのΑIたちのお仕事。しかし1000年前からずっと、その世界にゲストが訪れることがなくなっていた。
 とまあ、下品な言い方をしてしまうと、すげえ壮大なイメクラみたいな、そんな世界観である。ほんと、最低な表現だけれども。そこに<蜘蛛>と名づけられた怪物がやってきて、世界を蹂躙し破壊しはじめた。物語はそんなところから始まる。
 この設定だけでも、十分に魅力的だと思う。そこにかなりぶっ飛んだ展開がつづいて、それが蠱惑的な美しい日本語で終始描写されている。
 傑作だろう。偉大な才能に拍手を。