実存主義

実存主義 (岩波新書 青版 456)

実存主義 (岩波新書 青版 456)

 実存主義を軸にして、主にニーチェキルケゴールハイデガーサルトルの哲学について解説している。第1刷が1962年となっているので(それも驚きだが)、日本では構造主義の思想がちょうど輸入されてきた直後か直前か。
 その中でも、著者がサルトルの哲学に一番力を入れているのが、文面からよく分かる。サルトルの部分に、多くの紙幅を割いているわけでは決してないのだが、文章から著者の情熱が伝わってくる。まあ、そういったものはバランスが悪いといえないこともないのだけれども、こういった形でバランスが悪くなっている本を読むのは好きだ。僕としては、こういった本の方がよりエキサイティング。
 ハイデガーサルトルについては、神の存在を認めるか認めないかの点を基準にして、対比するように論じている。正直、ハイデガーについてはよく分からなかった。まだ漠然とした状態。後に、ハイデガー単独の入門書か解説書を読む(原典を読もうと考えるような体力も情熱もなし)。サルトルの方は、「実存は本質に先行する」という文章のヒューマニズム的側面を見るに、絶対的空間や時間を否定してそれ固有の座標軸が存在するとした、アインシュタイン相対性理論と関係づけて、強引に理解してみたり。

脱自的、長越的なありかたで、自己がいまだあらぬところのものであるように、また自己が現にあるところのものであらぬように、自己を成らせていくことである。人間は存在するのではなく、実存するのだ、ということの意味はそこにある。人間はたえず自己自身のそとに自己を投げかけ、未来に向かって現在をのりこえていくひとつの企てである。超越するとは、自己をのりこえていくということにほかならない。(p,131)

みたいな熱い文章にあてられて、ひとりガッツポーズをとってみたり*1

*1:ガッツポーズをとりながら、部屋の中をひとりぴょんぴょん飛び跳ねたりする。おもしろい本を読んでいるときに、高い頻度で発生する。他人には見せられないナルシシズム