ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック

ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック (中公文庫)

ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック (中公文庫)

 村上春樹がフィッツジェッルドにゆかりのあるアメリカの街々を訪ねながら、フィッツジェラルドの人生に思いをはせるという体裁になっている。また、村上春樹の訳した小説2編がついてきている。
 この本を読んでいると、フィッツジェラルド自身が時代に翻弄され、都市の消費社会に読み込まれて疲弊してしまったただの一人の青年というのが読み取れる。同時に、彼の持っていた文学的才能が如何に優れていたのかを感じられる箇所もある。
 以下は、村上春樹の小説に関しての文章。

優れた小説は(それが計算されたものかどうかは別にして)常に幾つかの種類のリアリティーを用意しているものであり、そこに解釈が生まれ、深みが生まれる。言い換えれば優れた小説は幾通りもの読み方ができるということでもある。(p,129)

 村上春樹訳の「グレート・ギャッツビー」が、近々出版されるらしい。結局春樹は、「ライ麦畑でつかまえて」も[グレート・ギャッツビー」も2つとも、訳してしまったなあ。