キャラクター小説の作り方

キャラクター小説の作り方

キャラクター小説の作り方

 小説の書き方を講義をすることによって、キャラクター小説論*1、文学論を行ってしまうというアクロバットな構成になっている。
 いかにも大塚英志らしい独断がばりばり出てきて、ところどころ辟易する。それでも、鋭いなと感じるとこは多い。
 お話とは欠乏からその欠乏の解消へ向かうのが、基本的な構造である。多くのお話はその構造を骨格にもつ幾多のバリエ―ションに過ぎない。
 そして、登場人物たちのキャラクター性とは、

  • キャラクターの性格や生い立ちその他の個人の特殊性に由来するもの
  • キャラクターが所属する「世界」の物の見方の価値観に由来するもの(p,222)

の2つから成り立っていて、この点は、世界観のあり様について考察するヒントにもなる。

架空の「世界」を読者にリアルに感じさせるには、その[世界」に根ざしたものの見方や行動をするキャラクターが不可決ですし、逆にキャラクターをリアルに表現するのは作者が生きている現実の[世界」ではなく、架空の「世界」との関わりの中で表現しなくはいけないのです。(p,232)

 最終的には、「近代文学」も結局は「私」という「キャラクター」を「文学」の制度によって無自覚に支えられていた小説である。それ故、「キャラクター小説」は「キャラクター」の中に「私」を自覚的に導入することで、「文学」に成りうるのではないか、としめている。

*1:本書の中では「スニカー文庫のような小説」と表現している