ある日、爆弾がおちてきて

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)

 白い腕がすうっとのびてきて、僕のシャツの胸元をそっとつかんだ。
「生きてるのって、すごくたいへんよね。先が見えなきゃ不安だし、かといって、見えちゃったらゼツボーだし。”未来”とか”将来”のことって、どっちにしても苦しいばっかりだよ」
「……なに言ってんだよ、広崎……」
「だからみんな、目先のことに一生懸命になって忘れたふりをしてるけど、でも、ほんとはみんな思ってるよ――『誰かが終わらせてくれないかなあ』って」
 僕はその場から動けなかった。その細い腕が、どうしても振り払えなかった。
「……だからあたしたちだけで終わらせちゃおう。未来なんかどかーんと吹き飛ばして、きらきらした現在(いま)だけを永遠にするの。みんな『そのほうがいい』ってよろこんでくれるよ。よろこぶ暇もないけれど」(P,45)

 こんな台詞がでてくるだけで、まず小説として信頼できる。
 本作は古橋秀之ライトノベルの短編集。SF(スコシフシギ)風味。僕がおもしろいと思ったものは、表題作の「ある日、爆弾がおちてきて」と梶尾真治へのオマージュともとれる「むかし、爆弾がおちてきて」。
 青臭いぞ、めちゃくちゃ。