社会心理学入門
- 作者: 南博
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1958/03/19
- メディア: 新書
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社会行動心理学とは、パーソナリティー、集団内行動、集団行動の3点より、人間の心理的メカニズムをはかろうとする学問。ただ50年も昔の本なので、当然人間のパーソナリティーや社会行動に変化があらわれていて、読んでいて違和感を感じる部分もある。しかしながら、そういった部分は圧倒的に少数だし、そういった部分にしても、時代の変化を感じられてそれはそれでおもしろい。
以下は、興味深かった点。
ある集団に属する成員の行動は、必ずしもその所属集団で通用する基準にしたうだけではなく、それ以外の集団の基準にそって行われることもある。いっぱんに、人間が社会行動をするばあい、その行動に基準を与える基準集団がある。もちろん所属集団が同時に基準集団になっているばあいもある。(p,84)
たとえば、ある会社員の父親は、勤めている会社の中での価値基準と自分の家族の中での価値基準をもっている。現代の資本主義社会ではこのような価値基準を1人の人間が数多くもっていて、それが自我の分裂につながっている。
また、
テレビや出版物のマス・コミュニケーションは、欲求不満のはけ口としての空想を提供する半面、新しい欲求不満をつくる源にもなりそこに循環がおこる。(p,35)
これは、マスコミのもつ悪魔的一面だろう。マス・コミュニケーションについて注目した考察には、鋭いものが多かった。
これは本の内容には全くの蛇足となる話だが、文章がとてもきれいだと感じた。さらさらと、よく整頓された明確なイメージの文章が気持ちよくつづいていく。読んでいて気分の良くなる文章だった。昔の人の方が日本が達者だったなんて、曖昧なことははあまり言いたくないのだけれども、古い岩波新書を読むとそう感じることが多い。