これが現象学だ

これが現象学だ (講談社現代新書)

これが現象学だ (講談社現代新書)

 エトムント・フッサール現象学について。
 とても良くできた入門書だと思う。現象学の基本から応用部分までしっかりおさえている。また明快にわかりやすくまとめてくれている。
 現象学とはまず、超越論的主観性よりはじまる。超越論的主観性とは、僕たちが見ているままの世界の捉え方、本書に即して言えば、マッハ的な光景で世界をとらえることである。次に、「現出」と「現出者」との相関関係の問題があらわれる。「現出」とは、ものがあらわれている面のこと、「現出者」とは、そのもの自身のことである。本書では、サイコロを例に出しながらやさしく教えてくれる。ソシュール言語学シニフィエシニフィアンプラトンイデア論などの構造と近いかな、と感じた。そして、「現出者」は「ノエマ」とも呼ばれ、「ノエマ」は多くの「ノエマ的意味(現出のことね)」を持つ。それらの「ノエマ的意味」は、それらと結びついている一つの「基体(ノエマのことね)」にむかって収斂していく。この関係は決して切り離せない。僕たちは、「現出」を突破して、「現出者」にたどりつき、そこではじめて主題的に経験することができる。
 以上が本書の基礎的な部分。おおよそ、紙幅の半分ほどを使って説明されている。それ以後は応用編として、時間や空間、世界や自我などについての考察がつづく。ここらあたりになると、それなりに難しく、理解するのが少しだけ厳しくなってくる。
 良書である。フッサール現象学についてはこれ一冊で十分だろう、と思える。