自閉症からのメッセージ

自閉症からのメッセ-ジ (講談社現代新書)

自閉症からのメッセ-ジ (講談社現代新書)

 自閉症とは、出生前もしくは出生後はやくの段階で発生する発達障害の独特なものである。大脳の前頭葉の部分、コンピュータでいえばCPU内の制御装置の部分に、障害を持っていることとなる。自閉症者の世界は、私たちに新しい多くのメッセージを与えてくれる。
 自閉症者は、「if/then」の言葉や行動のプログラムをうまくたてることができない。全体を統率できないため、自分の体をうまく歩かせることもままならない。ほかにも、この世界を立体的に認識していたり、何十年も前の日にちが何曜日であるか、瞬時に答えることができたりと、わたしたちとはかけ離れた面を持っている。
 自閉症者は、言語や感情や記憶や運動などについて、深いところでつながりのある障害を持っていて、自分にとってわかりやすい小さななわばりの中でしか生きようとしない。それを一般の社会に適応できるようにしていくのが、自閉症者への課題である。
 本書は、自閉症者に永年かかわっている教育学者によるものである。自閉症がどのようなものであるのか知ってもらうため、自閉症者の不思議について興味を引くように描かれている。それは、僕たちの日常に対する新鮮なカウンターとして、おもしろく読むことができた。