荒野の恋 第2部

荒野の恋 第二部 bump of love (ファミ通文庫)

荒野の恋 第二部 bump of love (ファミ通文庫)

 桜庭一樹が描く少女小説3部作第2作。
 前作からおよそ1年が過ぎて、荒野は中学2年生になった。裕也はアメリカに留学していて、毎月手紙がおくられてくる。小説家のパパと容子さんとの間には、赤ちゃんが産まれる。友だちには彼氏ができていて、そして荒野にも…
 たしか山田詠美だったと思うのだけれども、彼女がこんなことを言っていたのをなんとなく憶えていて(あいまいな情報で申し訳ない)、「音楽や絵画作品の魅力をはっきりと説明するのは難しいと、多くの人は理解している。けれども、文学作品または小説の魅力を説明することはできると、考えている人の数は多いのではないだろうか。小説が<言葉>、もしくは<文章>といったメディアをつかった表現方法であるがゆえ、その魅力を<言葉>で説明できると錯覚しているのではないか。しかし小説でつかわれる<言葉>もまた、音楽の<旋律>や絵画の<色づかい>などと同じく、決して正しく言語化できないものであるはずだ。その点で、小説の魅力を説明するのにも絶対的な限界がある。」
 僕もこの意見には賛成だ。ただし、毎年数多く出版される小説のなか、そのような評価を与えられる作品がいくつあるだろう。スタージョンの法則ではないけれども、きっと1割もないのではないか。
 しかし、桜庭一樹の小説家としての才能は、そういったうまく言語化できないという評価にふさわしいだろう。作品でも、その力を見事に結晶化している。「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」もすばらしいのだが、本作では、より読者にたいしての間口が広くなっている点も好印象。
 第3部を期待。