量子力学入門

量子力学入門―現代科学のミステリー (岩波新書)

量子力学入門―現代科学のミステリー (岩波新書)

 量子力学、特にその観測問題について多くのページを割いている。

観測問題についての論争は大別して2つある。1つは、正統的量子力学の原理的設定(コペンハーゲン解釈)にたいする疑問に根ざす論争であり、歴史上ではアインシュタイン―ボーア論争が有名である。もう1つは、その原理的設定は認めた上で、測定による「波動関数収縮」が現在の理論体系の中で説明できるかという疑問をめぐる論争である。(p,162)

 量子力学の世界の奇異性を囃し立てるような本ではない。たくさんの実験例を紹介していて、堅実な内容になっている。だけれども、やっぱり地味。多世界理論といったおもしろい仮説も紹介されているが、その反応はきわめてクール。観測問題にたいする形而上学的なとらえ方には、常に一定の距離を保っている。
 本の構成がとても論理的に構成されているため、難しく複雑な内容なのだが、全体像をとらえるのがすごく楽だった。