シリコンバレー精神

シリコンバレー精神 -グーグルを生むビジネス風土 (ちくま文庫)

シリコンバレー精神 -グーグルを生むビジネス風土 (ちくま文庫)

 「ウェブ進化論」は読了済み。
 1996年から2001年の間のシリコンバレーについて、当時そして現在もシリコンバレーに住んでいる著者により、エッセイのような簡単な文章で綴られている。もう10年も前になる話もあるので、世の中の変化を感じてしまうような部分があるのも事実。文庫化に際して、現在の地点から眺められたシリコンバレーやIT企業について書かれた、30ページほどのあとがきがついている。
 5年前のシリコンバレーも現在のシリコンバレーも、僕は知らない。そもそもまだ学生であるのだから、ビジネスの世界がどのような形で動いているかすら体感したことがない。そのため、この本を読んでも現在から遡行してシリコンバレーの姿をながめることも、ビジネスの全体像の中でシリコンバレーの特異性を感じることもできないかもしれない。
 それでも、この本はおもしろかった。その理由は著者の梅田望夫の考え方にあると思う。本書のなかにでてくる「マドル・スルー」という言葉がそれをはっきりあらわしている。「マドル・スルー」とは「先行きが見えない中、手探りで困難に立ち向かう」という意味。「ウェブ進化論」のを読んだときにも感じたことだが、この著者は肯定してくれる。何も分かっていない者が、未開の場所を突き進んでいくときの無謀さや無邪気さ、何も分かっていないからこそ、抱くことのできるポジティブな勇気。著者はこれらのことを、絶対的に信用してくれている。この文章は、まだ社会を知らない20そこそこの学生の僕に、大きな勇気を与えてくれる。