ダウン・ツ・ヘヴン

ダウン・ツ・ヘヴン―Down to Heaven (C・NOVELS BIBLIOTHEQUE)

ダウン・ツ・ヘヴン―Down to Heaven (C・NOVELS BIBLIOTHEQUE)

 少年の心のまま、大人の社会で生きる飛行機乗りの物語。
 前2作の方が面白かったなあ。
 なんだかすっきりしすぎちゃった感じ。

中国の歴史(上)

中国の歴史(上) (岩波新書)

中国の歴史(上) (岩波新書)

 全3巻の、岩波新書「中国の歴史」シリーズの第1巻。
 まず100ページ近く、中国の古代時代というよりも石器時代の話が淡々と続くので驚いた。ここは退屈だった。100ページ過ぎて、ようやく秦の始皇帝が出てきてくれる。
 もう2巻全て読んでから、中国の歴史について簡単にまとめたいと思う。

中世の開幕

 あつかわれている時代は、11世紀後半の白河法皇院政期から鎌倉時代を経て、元寇の後の南北朝へいたる14世紀前半までとなっている。
 院政期とは、日本における古代期の終わりであると表現される。この時期の特徴をとらえると、それは「律令国家」「ゆるやかな封建制度」「貴族政治」である。そもそも院政とは、律令国家に基づく公領支配の天皇制が、荘園支配を中心とし間接的に受領による公領をも支配する摂関政治にとって変わられ、今度は天皇よりも摂関よりも上位の権力を作り出し、公領も受領を間接とした荘園をも支配しようとしたものである。しかし、この時代の地方には明主と呼ばれるような新しい支配階層が現れてきていて、それは貴族階級とはまったく違った武士階級の出現であった。
 保元の乱平治の乱をもって古代期が終わり中世が始まるというのが定説である。これを期に武家の時代が始まる合図となるが、そのきっかけを作ったのが貴族社会の退廃によるものだった。
 院政期は、前半の白河・鳥羽院政と後半の後白河・後鳥羽院政の2つに分けられる。前半が摂関政治に対しており、後半は武家社会に対している、古いものと新しいものとをつなぐ変革期の文化なのである。そして、この院政期の文化を代表するものが法勝寺を代表とする建造物であり、もう1つが絵巻物語および説話文学である。
 鎌倉時代とは、院政期から続いていた武家と公家の二元社会を継続しており、承久の乱後は鎌倉幕府の武力により、武家が公家を圧倒していた。武家は政治を、公家は分を担当する二元社会であり、実はそれ以前には公領と荘園という二元社会があり、それ以前には土地と貨幣という二元的価値が存在しているのである。そしてこの時代の文化は、遁世の文化と言える。
 中世が土地に最高の価値をもっていた時代であるのなら、近世においては貨幣が最高価値だとかんがえる時代である。そうなると、南北朝の時代とは人間と土地と貨幣が三つ巴の形になって社会に浮かび上がっていた時代であり、それはつまり、古代と中世と近世がやはり三つ巴になって結びついていた時代である。この時代とは、小刻みの革命を進行させてきた日本の歴史が、1つの絶頂期を迎えた時代であったのだ。

殺人よ、こんにちは

殺人よ、こんにちは (角川文庫)

殺人よ、こんにちは (角川文庫)

 さらりと読みきれる小説を書くことができるというのは、それだけで賞賛に値するね。
 主人公は12歳の女の子で、お父さんは会社の社長。でもそのお父さんは突然死んでしまった。でも、私は知っている。お父さんを殺したのはお母さんなんだって。でも、そんなこと私には関係ないし、めんどくさい。夏の海に行っても泳ぐのは疲れるし、恋をするのだって退屈だ。そんな彼女のところで殺人事件がはじまって。
 解説でも指摘されていたけど、ヨーロッパ文学のにおい、特にフランス文学のイメージが強い。アンニュイな雰囲気と、無邪気で残酷な少女と、夏の海って組み合わせはまさにべたべただけど、うまく料理しているなと感嘆する。相変わらず、キャラクターを読者に認識させるのがうまい。ある程度典型的なキャラクターたちなのに、それなりの色がしっかりついていて魅力的になっている。
 こういったクールな物語の方が、赤川の資質がでるような気がする。

大正デモクラシー

大正デモクラシー―シリーズ日本近現代史〈4〉 (岩波新書)

大正デモクラシー―シリーズ日本近現代史〈4〉 (岩波新書)

 岩波新書の新しい日本近現代史の中の1冊。取り上げられているのは、題名の通り、大正デモクラシー
 大正デモクラシーとは、日露戦争に勝利して帝国になりあがった明治日本が、従来の構造では対応できなくなったことに由来して怒る運動の総体である。さまざまな階層より、旧来の社会構造と秩序に対して展開されている。そしてその運動は、日露戦争勝利の狂気に後押しされて、帝国主義の思想から生み出されたナショナリズムに近い「国民」の意識からやってきている。
 同時に大正時代は、大正モダニズムと呼ばれ市民社会が大きく花開いた時代でもある。東京の郊外には、サラリーマンのために文化住宅が多数作られるが、貧民層も増大していた。都市の拡大によりできた労働力のため、農村よりやってきた若者たちがそれにあたった。この時代は、そのような都市の貧民層を土台にした、いくつもの新興宗教が多数出現した。

古事記

現代語訳 古事記 (河出文庫)

現代語訳 古事記 (河出文庫)

 福永武彦現代語訳の「古事記」。
 福永の日本語はとても分かりやすく、美しい。けれども、とにかく神様が山ほど出てくるので、こんなに出てくるのかよと思うくらい出てくるので、混乱してしまう。
 次は古事記の解説書をあってみよう。

コミュニケーション不全症候群

コミュニケーション不全症候群 (ちくま文庫)

コミュニケーション不全症候群 (ちくま文庫)

 91年に出版された本。オタクや拒食症の少女たちの存在から現代社会を考察する。
 本作と姉妹作となるだろう「タナトスの子供たち」の共に読むとさらに理解が増すと思う。
 若者たちがここまで共同体、もしくはある1つの幻想の維持につよいプレッシャーを感じるようになってしまったのは何が原因であるのか。高度生産高度消費社会のせい?マスカルチャーのせい?社会が豊かになったから?結局、ぜんぶ大人がわるいのかな?