ノルウェイの森

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

 やっぱり、80年代の村上春樹の方が面白いと思う。
 連続して春樹の作品を再読していたので、共通点が見えてくる。
 春樹の物語には2つの世界が登場する。本作だと、直子のいる精神病院と緑のいる一般社会。「羊をめぐる冒険」では一般社会と北海道の羊牧場。「風の歌を聴け」では、僕の世界と鼠の世界といった調子で。
 主人公の「僕」は、今いる社会に対して違和感を抱いて、もう1つの世界に対して共感を感じるのだけれど、決して向こうの世界へは移ろうとしない。こちら側と向こう側の境界線上の、ぎりぎりこちら側で主人公たちはただ立ちつくしている。
 もう一点、この小説の最後の部分で、僕は緑に電話をかけるわけだけど、このシーンが必要であったのか、蛇足であるのか。この小説において、このシーンがもっている意味とは何なのか。