サブカルチャー神話解体

 最初に出版されたのは、93年である。少女マンガと青年漫画の変遷、聴いている音楽の取捨選択、性的コミュニケーションの3つに焦点を合わせて、大戦後から93年のバブル崩壊直後までの若者文化の変化を追う。
 よくできている本だと思うけど、あまりま新しさはなかった。おそらくここで書かれているようなことは、今ではほとんど当たり前の事となっていて、知らず知らずのうちにネットなどから吸収していたのだろうと思う。
 その中から、面白いと思う箇所をまとめる。戦前からの少年少女文化は、メインカルチャーの中に包摂されて、社会の理想を提示するものであった。それが60年代になると、若者として新たな生き方を提示する、サブカルチャーというものに変貌する。サブカルチャーはもはや、ありそうもない主人公による、ありそうもない苦難の克服を描く「代理体験の物語」ではない。若者たちにビビットな共感を呼び起こす、「関係性の物語」となったのだ。
 そして、60年代後半になって現れる「かわいい」というものへの志向の高まり、この点に注目した考察は面白い。「かわいい」とは、「大人(成熟)/子供(未熟)」というコードを意識的に無化し、「子供のまま性的になること」のマニュフェストとして、若者文化の中で利用されるにいたったのである。