キッド・ピストルズの冒涜

 ものすごくトリッキーなことをやっているくせに、見事な完成度を誇っている。ミステリで、こんなことができるのだなあ、とひたすら感心する。
 トリックもシンプルながら、人間の思考の裏をうまくかいたものである。読者の先入観を巧みに誘導していく。2つ目の、カバにまつわる殺人事件のところなんて、とてもシンプルで明快なミステリであることに、舌を巻く。
 僕がもっと若かったから、このポップな作品に熱狂しただろうなあと感じる。いやあ、とんでもなく、洒落た作品である。