都市のコスモロジー

都市のコスモロジー―日・米・欧都市比較 (講談社現代新書)

都市のコスモロジー―日・米・欧都市比較 (講談社現代新書)

 93年に出版された本。おそらく、80年代に流行した記号論による都市の解釈に対するカウンターといった、狙いがあるのだろう。でも、僕はその80年代のうんぬんを知らないので、最後までこの本のやろうとしていることがつかめなかった。筆者の主張の軸がどこにあるのか、結局わからないまま終わってしまった。
 その中でもおもしろかった点。建造物の文化を、日本は「空間における象徴的永続」にこだわるのに対し、一方西洋では「時間における物質の永続」に固執する。伊勢神宮の社が、材料を新しくして、何度も同じ姿で再建されているというのは、その良い例となるだろう。そして、このような時間の中の形は神話と同じ機能をもつようになるらしい。神話は時間を消滅させる。現存する社会の秩序を、太古からの自然の秩序の中に基礎付けようとするものらしい。