ABC殺人事件

ABC殺人事件 (創元推理文庫)

ABC殺人事件 (創元推理文庫)

 ミステリ小説として、非常に技巧の光る小説だった。
 クリスティの小説を読むのは2冊目だけど、ミステリ小説としての構造自体はすごくシンプルであると思う。結局ミステリ小説は、ある程度フォーマットが決まっていて、

  1. 舞台や登場人物の紹介
  2. 事件の発生
  3. 事件の調査
  4. 解決

 という順番になるのだと思う。この小説も、ミッシングリンクものの連続殺人だけど、構造自体はシンプルである。
 解決編で明かされるあまりにも見事な伏線で、息を呑んだ。どうやったらこんなこと考えられるのだろう。また、お話の進行がスムーズだなと感じる。よどみなく、きれいに流れていく。読者の興味をひくような、小さな事件や記述の仕方をしているのだろうけれど、このあたりもさらりとうまい。