グレート・ギャッツビー

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

 村上春樹が新たに訳した「グレート・ギャッツビー」。
 すでに僕は、野崎訳の「ギャッツビー」を何度か読んでいる。それにくらべると、読みやすいなと感じた。野崎訳が、格調高く流麗な文章であったとすると、こちらはやはり、どこか村上春樹の文章に引き寄せられているような印象がある。
 そういった影響もあってか、本書の方がこの作品の「狂おしいまでの切なさ」といった部分を、上手く日本語にうつしとっているようだ。物語の中で、ニック・キャラウェイのキャラクターが目立ってきている。村上春樹にしても現代の日本人にしても、大きく感情移入するキャラクターとは、このニックになるであろう。
 じりじりと近づいてくる漠然とした破滅を感じながら、ただ傍観者であろうとするニックの姿は、この作品がおそろしいほどに現代的な小説であるということを、証明している。