嘘つきは妹にしておく

嘘つきは妹にしておく (MF文庫J)

嘘つきは妹にしておく (MF文庫J)

 想像していたものとは少し違った。こんなにも、ポストモダンなお話だったとは。
 清水マリコという作家は、小説家としての力量が優れているとは、決していえないだろう。この一作だけを読んで、そう断言してしまうのは早急かもしれない。しかし、地の文は明らかにかたい印象がするし、上手く流れっていってくれない。250ページほどの作品にたいして、登場人物が多すぎて手に余っている感がある。演劇のシナリオを使ったアイデアも上手く機能してはいない。そういうのは、もっとメタメタにしないとおもしろくならないのではないだろうか。
 とまあ、ネガティブなことをつらつらと書いているが、この作者の志向しているものは、僕の感性に合う。ぴったりだってくらいに、もう僕はこの手の作品が大好きなんだよ。だから評価が難しい。結論をいえば、まちがいなく「好き」な作品なんだけど。
 イラストのtoi8については、かなり以前から知っていた。彼が自分のホームページにアップしていたイラストを、ダウンロードしてきてはよく模写をしていた。くすんだ色遣いと、描き手の味が残るタッチに惹かれる。