神々と人間

 「日本の古典」シリーズの第1弾。
 あつかっているのは、古代時代。「万葉集」以前、「古事記」や「日本書紀」が中心。
 古代の文学は、いかに個性的かが賞賛されるものではなく、いかに集団を代弁しているがというところに力点があった。
 そして古代の人たちにとって、言葉を獲得していく過程というものは世界を理解していく過程であった。言葉を使うことにより、古代人は世界を語る術を手にいれたが、神といった神秘なもの、条理を破るような人間の感情はそこからしめだされてしまった。それらのものは、言葉ということわりの中にはおさまりきらないものだったのであろう。
 そのしめだされたものをすくい上げたのが、歌謡や和歌である韻文であった。
 世界を語るものとして散文が、言葉のことわりではうつしとれないようなものをすくいとるものとして韻文が、別れていったのだ。
 このシリーズは良書である。絶版なのが本当に惜しい。