メルヘンの深層

 「長靴をはいた猫」や「ジャックと豆の樹」などメルヘンを解剖していく。心理学の方向から、この手のものを解釈しようとしたものは多いだろうけれども、本書は歴史的な見地、または比較文化の見地より解釈していこうとしている。その点が新鮮である。
 そこで幾つかを紹介。
 まず、「シンデレラ」。心理学的に見ても、いろいろな宗教などを見ても、はだしというのはネガティブに取り上げられるものである。中国での纏足がその例になる。その点で、シンデレラがガラスの靴を脱ぎおとしてきたというのは、ちょっと怪しい、性的なイメージを連想することができる(靴には心理学的に女性器のイメージがあるらしい)。それを王子さまが持ってきて、わざわざはかしてくれるって、何かエロエロ?
 さて「白雪姫」。この物語は母と娘の美しさをめぐる対立の物語として読める。ただその他にも、娘の自立の物語とも読むことができる。白雪姫は毒リンゴを食べて眠りにおちてしまう。中世のヨーロッパでリンゴはその形から、「世界」や「支配」の象徴といった意味を持っていた。リンゴを食べてしまうというのは、娘の支配者である父親と性的な関係にあったと解釈することができる。その後ガラスの棺の中で眠り続ける娘とは、浄化作用をあらわし、若い王子様のキスで再生する、とかんがえることができる。
 また、興味を持った指摘の部分、

メルヘンは、いわば女性にとって必要な情報として、女性によって語られ、女性によって伝承されてきました。(P,4)