「わかる」技術

畑村式「わかる」技術 (講談社現代新書)

畑村式「わかる」技術 (講談社現代新書)

 著者は機械工学を専門としている方らしい。数多くの企業の工場を見学し、それをレポートにまとめるといった仕事もしている。そのような、きわめて具体的なものづくりの現場に立ち会っている見地から、物事の構造とはどのようになっているのかを抽象的に解説していく。ハウツー「分かる」本。
 最初に言ってしまうと、とてもおもしろかった。ためになった。第1章部分だけでも、定価700円をはるか超える価値がある。
 あらゆるものは、「要素」「構造」「機能」の3点で表現できる。そして、「分かる」ということは、「要素の一致」「構造の一致」「新たなテンプレート*1の構築」という、3つのことである。
 で、「要素の一致」と「構造の一致」なら、ものごとをよーく観察すればいいのだが、「新たなテンプレートの構築」の場合は違う。「新たなテンプレートの構築」とは、自分自身の知識や経験を使うことで、新たな自分自身の知見を作ることである。これに必要な能力とは、要素の摘出と構造化を通じて、ある事象の因果関係をきちんと理解する、という能力である。ええと、自分の頭の仲で論理的なプロセスが作れるか、作れないかということなのかな。
 また、それ以外のなるほどポイント。

  • あらゆるものは、10個ていどの要素のつながりからできている。
  • 話のおもしろい人は、立体的な構成で話している。(聴き手のテンプレートを豊かにする。)
  • 聞き上手の人は、話の構造化して、テンプレートを作る手伝いをしてくれる。
  • 順方向だけでなく、論理を逆方向にも捉えてみと、新たな発見がある。

 誰もが、読んで損のない本だと思う。

*1:型紙といった意味