光源氏の一生

光源氏の一生 (講談社現代新書)

光源氏の一生 (講談社現代新書)

 題名の通り、「源氏物語」を光源氏の一生にまとめて紹介している。わかりやすく、読みやすい。入門書としては及第点だろう。
 「源氏物語」が、王氏と他氏*1の対立という構造を持っている。家、あるいは家系にとりつく日本的な怨霊という考えが貫いているということ。光源氏と藤壷の女御の密通と柏木と女三宮の密通という繰りかえされる歴史。などといった非常に物語として構造的にしっかりしているといった話は新鮮だった。
 また繰りかえされた密通の歴史に、とくに「平家物語」からよく読み取れる日本的な無常観があらわれているといった点は新鮮だった。

*1:氏族の中で王氏が皇族出身者、他氏がそれ以外の出身者という意