欲求の心理

欲求の心理 (1973年) (岩波新書)

欲求の心理 (1973年) (岩波新書)

 欲求と言っても、一時的欲求、ホメオスタシス性の欲求に関することがほとんどであり、僕の予想とは違っていた本だった。また内容に関しても、どうにも歯切れの悪い文章が多い。「こうこう考えれています。ただし、このように考えることもできますよね」みたいな文章がたくさん。いろいろな意見を紹介してくれていて、真摯でもあると言うことができるのだが、断定する勇気も必要だ。読んでてモヤモヤした。
 そんな中、ハッとした箇所。

怒りの情動に対しては、その表出をおさえるように自我が”締め付ける”という指摘もおもしろい。特に深層におこる自我関与的な怒りの情動には、このような傾向のあることを、日常われわれも体験している。(中略)怒りと対照して”悦び”の情動の特徴をあげている。喜びは、起こりとは対照的で、これには体系の機能壁を”弛める”特徴があり、したがって悦びの情は、素朴に表現されやすいという。(p,62)